情報セキュリティ大学院大学公開講座『暗号入門7講』

プライバシー保護技術

内容紹介

 電子署名を用いると,誰が,どのような文書に対して署名を行ったかを,誰でも確認できる.これは,実世界における署名よりも強力な機能であるが,プライバシー保護の観点からはこの機能を一部制限したい場合もある.例えば,電子商取引において,署名者が作成した電子署名を収集された場合は,署名者の意図に反して,商取引の履歴が第三者に知られるといった不都合が生じるかもしれない.

 この入門講義では,匿名性を有する電子署名とはどんな技術か,またその仕組みについて解説したい.このような匿名性を有する電子署名を構成する場合には,ゼロ知識証明が広く利用される.具体例として,離散対数問題の困難性を利用するゼロ知識証明を取り上げ,匿名性を有する電子署名の構成方法をみる.

 なお,どの程度の匿名性を確保するかに関しては,署名者集合のサイズが重要となる.署名者集合のサイズに署名長が依存しない方法の構成方法の概要と,それに深く関係する幾つかの数論問題についても述べたい.(土井)

講義ノート